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税務調査

皆様の中には、なんで税務調査ってあるんだろうと思われる方がいらっしゃると思います。
その理由をお伝えします。
相続税は、納税者が自ら税務署へ税金の申告をし、納税をするという「申告納税制度」を採用しています。
基本的には、税法に従った正しい申告をしているという建前なのでしょうが、全ての納税者が正しい申告をするとは限りませんね。
意図的に申告から財産を抜いたり、財産の評価額を低くしたりして、相続税をできるだけ少なくしたいと思う人はいるものです。
また、意図的にではなくとも、税法の適用誤りで、結果的に納税額が少なくなっている場合もあるわけです。
そのため、国税側としては、申告された内容を確認し、正しい申告にしてもらうために税務調査を行うことになります。
税務調査を行うことができる法律が存在します。
国税通則法という法律の74条の3に規定されています。

相続税の税務調査の流れ

以下のような流れで税務調査に進んでいきます。
  1. 市区町村長から所轄税務署に被相続人の死亡の通知をする。
  2. 所轄税務署では、被相続人の所得税の申告書や財産債務の明細などの資料を収集、不動産の固定資産台帳や被相続 人の過去の所得から財産の所有している被相続人を選定する。
  3. 納税者からの相続税の申告書を受理する。
  4. 申告書の内容を審理する。
    申告書の審理期間は約6ヶ月、被相続人だけでなく相続人の資産内容を金融機関や証券会社、保険会社などで調査する
  5. 税務調査対象者を選定する。
  6. 税務調査の実施。

まず、電話で調査の連絡があり、日時を確定させ、自宅に訪問し聞き取りを行います。

相続税の税務調査での質問事項

税務調査の当日は午前10時頃から始まります。
身分証明書を提示し、お悔やみを述べます。ホントは、何とも思っていないのでしょうが・・・・。
そして、「立ち入った質問をさせて頂くこともあります。」と断ったうえで始まります。
当日は、いきなり不明点を問いただしてくるのではなく、午前中は世間話をするようにさりげなく情報収集に努めます。

この世間話というものがくせもので、調査を円滑に進めるため、納税者の方と話しやすい雰囲気を作るという目的もあるですが、次のような何気ない会話でも調査官にとっては意味のある質問なのです。

その質問と回答から引き出そうというねらいや確認項目は以下のようになります。

1. 被相続人の死亡原因について

事故死か病死かの区別、療養期間は長かったか否か、意思能力や行為能力はいつまであったかを確認します。

2. 被相続人の経歴や職歴について

蓄財の方法や生前所有していた可能性の高い財産の推定を行います。

3. 被相続人の趣味について

ゴルフが趣味であればゴルフ会員権が、骨董品に関心があればそれらの財産があるのではないかと推測します。

4. 被相続人の財産は生前、誰が管理していたのか

管理してきた人の預金と被相続人の預金との区別ができているかを確認するためです。
また、仮装や隠蔽の事実がある場合は、その行為を誰が行ったのかを特定するためです。

5. 相続人の家族の職業や推定所得について

相続人の収入を確認し、相続人の預金などの残高のバランスを検討するためです。

6. 郵便局や農協の預貯金はないか

一般的に都心部以外の地域では郵便局や農協との取引が多く行われているため、それらの預金残高が申告書に記載されていない場合に確認します。

7. 相続税の納税資金はどこから捻出したのか

多額の相続税の納税資金の出所はどこかを確認し、申告漏れとなっている金融資産を見つけるためです。

8. その他の金融資産はないか

具体的に銀行名を告げて質問する場合は、資料を押さえた上での質問と考えてよいでしょう。その場合、相続人は再確認のうえ申告漏れがないか慎重な対応が必要です。

税務調査を受けやすい相続税の申告書

以下のような申告書が税務調査の対象となると思われます。

1. 税法の適用に誤りや疑問のある申告書

税法の適用に誤りがあれば、国税としては是正する必要が生じます。また、適用要件を満たすか否かについては税務調査を通じて確認することになります。

2. 生前の状況から推定すると、金融資産の申告が少ない申告書

例えば、生前に不動産を売却しており、他に不動産を買い換えたり、別の資産を購入していないにもかかわらず、預金額の申告が少ないような場合です。
そのため、生前の所得状況から異常に金融資産の少ない申告書は調査の対象となりやすいのです。

3. 家族名義の預金等のチェックや申告が行われていない申告書

被相続人と家族名義の預金が混同されて利用されているケースも多くあります。それらのチェクが行われた形跡がない申告書も調査対象となりやすいです。

4. 財産評価のための添付資料等が不備な申告書

相続財産の評価については、公的な資料等の確認が欠かせません。そのため、各種財産の評価に関する資料の添付が不足している申告書は調査の対象となりやすいです。

5. 各種資料との突き合わせにより申告漏れが予想される場合

国税が入手した各種の資料と突き合わせた結果、申告漏れがあると予想される場合も調査の対象となります。

金融資産の調査

税務調査の結果、申告漏れを指摘される財産のうち、金融資産(現金、預貯金、有価証券)の割合はかなり高いのが実情です。
特に、被相続人名義の預貯金や有価証券ではないものの、名義預金として課税されている場合が多いです。

1. 名義預金等とは

形式的には配偶者や子・孫などの名前で預金をしているが、収入などから判断すれば、実質的にはそれ以外の真の所有者がいる場合、つまり、それらの親族の名義を借りているにすぎない預貯金をいいます。
名義が被相続人のものでなくても、実質的に被相続人の預貯金と認められるものは、被相続人の相続財産とされます。
また、預貯金以外でも同様に名義株式とされるものもあります。

2. 贈与との関係

被相続人の名義ではないのだから、それは以前に贈与されたものだと主張する相続人はいます。
では、贈与とはどのようなことをいうのでしょうか。
民法549条において、
「贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。」と規定しています。
つまり、あげる側の意思表示ともらう側の意思表示あって成立する契約です。
あげる側の一方的な意思表示のみでは、民法上の贈与は成立しないことに注意が必要です。

名義預金の判断基準

以下のいずれかの基準に該当すると名義預金と判定され、その預金の名義にかかわらず、実質的な所有者の預金と判断される可能性が生じます。

① 使用している印鑑

家族名義の預金の印鑑が全て同一であり、しかも、被相続人が自分で使っているものと同じである場合は、名義借りの可能性が高くなります。

② 受取利息

家族名義の預金の利息を被相続人名義の預金に入金し、被相続人がそれを使っている場合も名義借りの可能性が高くなります。

③ 管理状況

預金通帳や定期預金証書を誰が管理していたのかで、名義人の判断材料とします。
例えば、被相続人が全て自分で管理しており、名義人はそのような預金があることさえ知らなければ、名義借りの可能性はぐっと高まります。

④ 贈与税の申告の有無

預金は贈与したものだ。だから、自分の名義になっていると主張しても、贈与税の申告が無いと名義借りの可能性が高くなります。
つまり、預金は単に名義を変えたたでで、実質は被相続人の財産と判断され、相続財産として課税されるということです。

税務調査前日までの対応策

税理士が申告書を作成し、税務署へ提出した場合は、通常、その税理士に調査したいと連絡が入ります。
調査日時、調査場所、調査官の所属部門及び氏名を伝えてきます。
申告を担当した税理士は、納税者の方と連絡を取り、調査官からの連絡内容をお伝えし、調査日時の確認をします。
追って、調査官に調査日時を連絡するという流れです。

税理士に頼まず、皆さんがご自身で申告書を作成し申告した場合は、皆さん自身に調査の連絡がきます。

それでは、調査前日までの対応策をお話しします。

1. 相続税の申告書と基礎資料の準備

調査当日までに相続税の申告の基礎となった資料を用意します。特に、過去5年程度前までの預金通帳は、被相続人のだけではなく、同居していた家族名義のものも提示が求められることがあります。

2. 税理士との打ち合わせ

税理士に申告担当をしてもらった場合は、調査のポイントを事前に確認しておきます。
調査官から聞かれる質問があらかじめ予測できていると、当日は落ち着いて回答をすることが可能ですし、また、不用意な発言を回避することも可能です。

3. 自宅の整理整頓

税務調査は、応接室などの一室で行われますが、調査の途中で調査官はトイレを借りたり、重要書類の保管場所まで同行したりします。つまり、応接室以外も観察しているわけです。
取引金融機関からもらったカレンダー、タオルなど、誤解を招きそうなものは整理しておくべきです。

4. 重要書類も整理しておく

先程お伝えしたように、税務調査は、重要書類の保管場所まで調査官が同行します。したがって、金庫の中や引き出しの中に調査中に誤解を生じさせるようなメモや紙類が残っていないように整理しておきましょう。

5. 印鑑の整理

調査官は印鑑については、印影を取ります。被相続人の印鑑と家族の印鑑を一緒に保管していると、誤解を生じやすいので、事前に整理しておきましょう。

6. 貸金庫内の整理

調査官は銀行まで同行し、貸金庫の中まで確認する場合もあります。したがって、貸金庫内の書類についても整理しておきましょう。

7. 高価な調度品などの整理

室内に飾ってある高価な調度品なども無用な誤解を招かないように、整理しておきましょう。

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